冬休みに入り、お子さんと過ごす時間が増えている時期ですね。
ふとお子さんを見ると、食べる時にくちゃくちゃ食べていたり、食べている時に舌がみえたり、話す時に舌が見え隠れする、、、
お子さんの食べ方、話し方に違和感を感じておられる親御さんも、いらっしゃるのではないでしょうか。
実はそれは、舌の癖が原因かもしれません。
私は、14年お子さんの矯正治療に携わり、お子さんの歯並びを改善してきた歯科医師です。
今日は舌の癖と歯並びについてお話ししていきます。
きれいな歯並びになる秘訣を知りたい方は、最後までお読みください。
舌の癖が歯並びに関係するのはなんで?
結論から言いますと、舌の癖があると、歯並びが崩れます。
その理由は、歯の外側は頬や唇、内側は舌の存在し、筋肉に挟まれた中間(ニュートラルゾーン)に、歯が並んでいるからです。
特に大事なのは、お口を閉じている時に、舌が上あごにピタッと張り付いていることです。
上の前歯の裏の歯ぐき(スポット)に舌の先が当たり、舌の奥の方も上あごに張り付いていることで、成長期のお子さんなら上あごが育ち、大人であれば歯並びが維持できる仕組みです。
残酷ですが、生涯を通じて、舌が上に上がっていなければ、歯並びはやがて崩れます。
今あなたの舌はどこにありますか?
お口が開いていたら、舌は確実に下に下がっています。
お子さんの舌の位置は、寝ている時に下あごを押して、お口を覗いてみてください。
舌が上に上がり、舌の裏側のスジ(舌小帯)がみえていたら、舌は普段から上あごに上がっています。
舌の癖とはどんなもの?
舌の癖を、舌癖(ぜつへき)と言いますが、様々な種類があります。
代表的な3つの癖と、その癖によって引き起こされる歯並びをご紹介します。
舌突出癖(ぜつとっしゅつへき)
安静時、飲み込む時、発音する時に、舌を前後に動かす癖のことです。
奥歯が噛んでいるのに前歯が咬みあわない状態(開咬)、前歯が前にでる出っ歯(上顎前突)、前歯の凸凹(前歯部叢生)を引き起こします。
その背景には、指しゃぶり、おしゃぶり、口呼吸、鼻づまりが見られます。
低位舌(ていいぜつ)
安静時に舌が上あごに張り付いておらず、下に下がっている状態のことです。
上あごの歯の並ぶアーチが狭くなったり(狭窄歯列)、下あごがズレて一部が反対に咬んだり(交叉咬合)を引き起こします。
口呼吸を伴うので、目の下にクマがあり、お口がぽかんと開く、アデノイド様顔貌と言われる特徴がみられます。
異常嚥下癖(いじょうえんげへき)
赤ちゃんは母乳やミルクを飲む時に、舌を前後に動かして飲むのですが、成長しても赤ちゃんの時の舌の動かし方が残り、異常な飲み込みをします。
舌突出癖や低位舌と似ていて、上あごのアーチが狭くなったり(狭窄歯列弓)、舌に押された歯が外側に押し出されたり、咬めない部分(開咬)が見られます。
唇やあごの筋肉の緊張を伴い、お口の中にあぶくが残るので、あぶくで異常嚥下癖を疑うこともあります。
舌の癖が治らなければ、歯並びはどうなるの?
舌の癖が治らなければ、歯並びはずっと変化し続けます。成長期のお子さんであれば、上あごの成長が上手くいきません。
数日、数ヶ月では変化が分かりませんが、年単位、数年単位で変化します。
舌突出癖などの舌の癖をもっている方やお子さんは、決して舌の力が強すぎる訳ではありません。
舌の癖がある方の最大舌圧は20~25kPa (JMS舌圧測定器で測定される値)以下であることが多く、正常な方は30~40k㎩、学童期のお子さんで20~30k㎩が目安です。
舌を上にあげて測定する最大舌圧は、舌の癖がある方は、正常な方に比べて、弱いことが分かっています。
ですが、舌の癖がある方の安静時の舌の力(舌圧)は5~15kPa、正常な方の安静時の舌の力(舌圧)は、約1~5kPaです。
歯列に影響を与えない安静時舌圧は約1~5k㎩で、このくらいの舌の力ですと、歯並びに影響しません。
決して強い力ではないですが、舌の癖があると長時間・持続的に・反復して力がかかるため、歯並びが変化していきます。
安静時にどれだけ無駄な力を抜いて、舌を上あごにピタッとつけることができるかが、とても大事になります。
矯正をした後に舌の癖が治らない場合は、歯並びがどうなるの?
矯正治療後も、歯並びは変化しようとします。
矯正治療後は、歯並びを維持するための装置(保定装置)を夜間装着してもらうことが、成人の矯正では多いです。
矯正治療をする方の多くは、舌の癖があって歯並びが悪くなり、矯正をされているので、舌の動きやお口の機能が正常に治っていないと、保定装置をつけていても歯並びが変化します。
歯並びを維持するために、舌の癖がいかに影響しているか、お分かりいただけましたでしょうか。
ここまで読んで、悲観的になる必要はありません。
今からお話しする点を意識することで、舌はあごと違って筋肉なので、いつからでも変わることができます。
舌の癖の対処法~歯並びが良くなるために~
4つのステップで、進めていきます。
ご家庭でできることも沢山ありますので、是非実践してみてください。
ステップ①
舌の正しい位置を、知ることから始めましょう!
舌の先は上あごの前歯の裏(スポット)という位置に置きます。
スポットに舌の先を当てられないお子さんは、舌を鳴らしていみると場所が分かりやすいです。
それでもできないお子さんには、上の前歯の裏の歯ぐき(スポット、切歯乳頭という歯ぐきの膨らみ)を親御さんの指で触り、「ここがベロの場所だよ。」と教えてあげてください。

お口を開けた状態で、舌の正しい位置にもってこれたら、舌をそのままでゆっくりお口を閉じ、歯を咬み合わせます。
そのままツバゴックンをします。
その時に舌が前に行かないように、ツバが飲み込めるように練習をこの順序でしてくださいね。
ステップ②
次に、食べる姿勢を見直します。
一日中姿勢を正せるようになると、舌が上あごにピタッと引っ付いた状態を維持しやすいです。
ですが、初めは食事中の姿勢を正すことからです。
どんな姿勢を目指すのかというと、骨盤を立てて座ることから!
お尻の後ろに巻いたタオルを敷いて、骨盤を立ったまま維持できるようにします。タオルが補助していくれるのです。
そして、椅子に座る場合は、膝裏の角度が90°以上になり、足裏が床につくように調整します。
椅子に座らない場合は、正座やあぐらでも構いません。
そして、肘をまげて肘が90度になるような高さの机を用意しましょう。
舌のポジッションというのは、姿勢にかなり影響を受けます。
骨盤を立てて、足を床につけて食事をすることで、体の中心を意識し、脇をしめて、頭を支え、舌が正常な動きをすることができます。
食事中は、何度も噛んだり飲み込んだりするので、特に食事中の姿勢を見直すことから、おすすめしています。
安静時に舌が上がるようになるためには、姿勢を無視できないのです。
ステップ③
口を閉じることができるように、鼻づまりがないか確認し、鼻水が詰まっている場合は取り出してあげましょう。
専用の吸引器もいいですし、サイナスミストという生理食塩水のミストで鼻水を柔らかくしてから吸うのもおすすめです。
鼻うがいも効果的です。
鼻呼吸できていないと、口呼吸せざるを得ません。
口呼吸をしていたら、必ず舌は下がっていますので、いくら舌の訓練をしても舌癖が治りにくいです。
ステップ④
さらに、アレルギー対策も必要な方もいらっしゃいます。慢性的に鼻炎が続くお子さんは、ご検討ください。
牛乳や小麦を断つことで、アレルギーが緩和されることがあるからです。
食品の添加物や、体質に合わないものを避けて、お食事を摂ってもらいます。
食べたもので体は作られるので、食事の見直しも大事にしています。
受診時期は?
受診時期
舌が前にでて、口が開いている、、、そんなお子さんがいらしたら、一度ご相談ください。
早ければ早い方が癖は治しやすいですが、何歳からでも舌癖を治すことは出来ますので、年齢に関係なくご相談ください。
気づいた日が、貴方の一番若い日です。
どんなことを歯医者さんでしてもらえるの?
一般的には、あいうべ体操やパタカラ体操など説明を受け、舌の正しい動かし方を学ぶでしょう。
私は、それも大切にしておりますが、舌の筋力をつけるよりも、無駄な力を抜き、舌を正しい位置に導くために「舌の癖の対処法」で書いた内容を、個々に合わせてサポートしています。
矯正治療の判断は?
5歳を過ぎて明らかな歯並びの不正がある場合は、顎顔面矯正で骨格の形態を整え、正しい機能を獲得するよう当院ではサポートしています。
歯並びは気にならないからと、矯正を選択しない場合でも、舌の機能を正常に回復させることは、良く食べ、よく遊び、良く寝るために必要なこと。
舌の癖を治すために通院され、サポートしている方もいらっしゃいます。
最後に
癖は簡単に治るものではありませんが、早いうちにアプローチすれば改善しやすいのも事実です。
小さいお子さんをお持ちの親御さんは、違和感や異変に気付いた時点で、早めに歯医者さんにご相談ください。
私もお口をぽかんとあけ、口呼吸する我が子と向き合っています。
親御さんの気持ちも痛いほど理解でします。
本気で舌の癖を治したいと思われるなら、本気でできることを今のうちにしてあげましょう。
村上歯科医院 副院長 藤原千尋
