いきなりですが、舌小帯をご存知ですか。
舌の裏の真ん中にあるスジのことを、舌小帯(ぜつしょうたい)と言います。
今日は、他院で舌小帯を切ったお子さんのお話を例に、解説していきますね。

私は、小児歯科、小児矯正歴14年の歯科医師です。
これまで舌小帯が短い患者さんのスジを切らせてもらった経験がありますが、近年は切らなくても舌訓練を行うことで、舌小帯が伸びる場面に多く出会っております。
舌小帯と歯並びの関係
舌と歯並びは、密接に関係しています。
歯は、外側は唇や頬、内側は舌があり、内外の圧のバランスが取れたところに並んでいます。
それをバクシネーターシステムと言います。
舌小帯が短く、舌の動き(可動域)を舌小帯が制限している場合は、もちろんこのバランスが崩れ、前歯が噛めないかみ合わせ(開咬)、舌突出が原因の出っ歯になるなど、歯並びに影響する可能性が高いです。
舌の動き(可動域)を決める要素は、舌小帯の位置、長さの他に、舌筋そのものの形態、姿勢と筋膜との連携(アナトミーチェーン)などがあります。
舌小帯を何故切るの?
産まれてまず初めに舌小帯を切る可能性がある場面は、赤ちゃんの時期です。
哺乳するために、舌小帯が短く、上手く飲めない場合は、早急に舌小帯を切る必要があります。
この場合、助産師さんと相談した上で、判断するようにしています。
哺乳するため、生きるために、切るのです。
逆に言えば、舌小帯が短くても、正しく哺乳できていれば、切る必要はありません。
その後、発音でタ行、カ行が言えない場面や歯並びが悪い場面で、舌小帯が短いことが原因の場合は、切ることがあります。
しかし、安易に切ってはいけません。
舌は筋肉の塊ですので、まずは舌を動かし、舌小帯が短いながらも舌を動かす練習をします。
動きが少し改善したところで舌小帯切除を行うと、術後も後戻りすることが少なく、舌の動きが良くなります。
切ったらすべての問題が解決できる訳ではありませんので、術前の舌の動かす練習が重要だと私は考えています。
ある日、他院で舌小帯を切ったお子さんが来られました。
「切っても、舌の動きが悪いんです。」というご相談でした。
舌小帯を切ったらすべての問題が解決すると思われていたそうです。
舌の動きをよくするために、まず動かす訓練をした上で切り、術後も舌を動かし続ける必要があります。
たかが舌訓練、されど舌訓練。
舌訓練の重要性を見直し、舌訓練を説明しました。
当院での対応法
当院では、舌の訓練を行うようにしています。
具体的には、こんな方法です。一部ご紹介します。
・ポッピング:下を上あごにつけて、「ポン」と音を鳴らす動きを繰り返す練習
・からみ止めパイプで吸う:からみ止めパイプを用いて開口したまま、舌を上あごに押し付けて水を吸う練習
・舌の上にゴムチューブ:舌の上にゴムチューブを置き、上あごに押し当てる練習
・舌タッチ:口や唇まわりの指した部分に、舌尖を当てる遊び
とにかく、上に横に斜めに下に、舌をしっかり動かす練習をしてくださいね。
1日1分でもいいので、継続すると、その積み重ねで舌の動きは変わります。
特に、小さなお子さん~小学生は、大人に比べると舌の動きが変化しやすい実感があります。
舌小帯を切っても歯並びが良くならないのは何故?
ここまで読んでくださった方は、お分かりですね。
舌の動きをよくするためには、舌を動かす訓練が必要だということです。
舌小帯を切っただけで、舌が正しい動きをできる訳ではないので、当然歯並びは良くなりません。
何事も継続です。
楽しみながら舌を動かす訓練を行い、あごを育てて、きれいな歯並びを育みましょう!
村上歯科医院副院長 藤原千尋
